
海の中で枝を広げるサンゴや、丸い岩のようなサンゴ。そのひとかたまりを、「ここに一匹、あちらにもう一匹」と数えたくなるかもしれません。
前の記事「サンゴは、どんな動物なのだろう?」で触れたように、サンゴの表面には、口と触手をもつ小さな体がたくさん並んでいます。この一つひとつが「ポリプ」です。[1]
では、この小さな体の一つひとつを、一匹と数えてよいのでしょうか。
小さな体が増えて、群体になる
一つのポリプには口と触手があり、食べものを取り込めます。サンゴでは、この一つひとつの体を「個体」と呼びます。[1]
多くのサンゴでは、ポリプから新しいポリプが生まれ、数が増えていきます。体の一部に芽が出るように新しいポリプができる「出芽(しゅつが)」や、一つのポリプが二つに分かれる「分裂」などの増え方があります。[2][3]
こうして増えたポリプは、互いに体がつながったまま暮らします。たくさんのポリプがつながってできた、このまとまりを「群体(ぐんたい)」と呼びます。[1]
枝状や塊状に育つサンゴの多くも、こうした群体です。遠くからは枝やかたまりの形が見え、近づくと、その表面に一つひとつのポリプが見えてきます。[1]

魚の群れとは、何が違う?
たくさんの動物がまとまっている、と聞くと、魚の群れを思い浮かべるかもしれません。魚は互いに近くを泳いでいても、体は一匹ずつ離れています。
一方、出芽や分裂で増えたサンゴのポリプは、もとのポリプと基本的に同じ遺伝情報をもつ「クローン」です。[2][4]
サンゴの群体では、隣り合うポリプの体が、生きた組織でつながっています。イシサンゴの骨格の表面で、ポリプとポリプの間をおおっている部分も、サンゴの体の一部です。[1]
さらに、つながりは体の内側にもあります。食べものを消化する空間から細い管が伸びて、ほかのポリプの内部へつながっています。その管を通じて、栄養などの物質が群体の中を運ばれます。[1]
一つひとつに口があり、それぞれが食べものを取り込みながら、体の中ではほかのポリプともつながっている。サンゴの群体には、そんな暮らしのしくみがあります。
ポリプを見るか、群体を見るか
では、ひとかたまりのサンゴは一匹なのでしょうか。
口と触手をもつポリプに目を向ければ、そこにはたくさんの個体がいます。一方で、その体はつながり、群体全体でも一つのまとまりとして生きています。[1]
なお、すべてのサンゴが群体をつくるわけではありません。一つのポリプのまま育つサンゴもいて、そうしたものは「単体(たんたい)」と呼ばれます。[1]

群体をつくるサンゴでは、一つひとつのポリプを一匹の個体として数え、そのつながった全体を一群体と数えます。枝やかたまりの姿を見ているときと、小さなポリプを見ているときでは、数えているものが違うのです。
次の記事では、 動物のサンゴは、光をどう利用している? のかを見ていきます。
出典(調べるのに使った本や資料 ─ 4件)
- NOAA Coral Disease & Health Consortium「Coral Polyp Anatomy」— ポリプの基本構造、単体と群体、ポリプをつなぐ組織と内部の管。
- NOAA Ocean Service「How do corals reproduce?」— 出芽によるポリプの増加とクローン。
- 新江ノ島水族館「『くらべてみよう サンゴとわたし』6:サンゴの成長」(2025年12月19日)— 日本語での出芽と分裂の説明。
- 日高道雄「群体サンゴの形態形成と自他認識に関する話題」『日本サンゴ礁学会誌』25巻1号、27–44頁(2023)— 出芽による群体形成と、クローン・自他認識・群体の癒合を扱う日本語論文。
リンクの確認日 : 2026-10-23
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