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サンゴの密集したポリプの間に身を隠す、青い目のキモガニ。
Akira, 2012 / Yonehara beach

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キモガニは、すみかのサンゴを食べている

un-0061 公開

サンゴに住むカニは、サンゴを守ってくれる。

私は、そう思っていました。サンゴガニのなかまには、サンゴを食べるオニヒトデを追い払うものがいるからです。[1]

ところが、サンゴの枝の間で暮らすカニを調べてみると、すみかのサンゴを食べるカニもいると知りました。

サンゴはお家で、食べものでもある

キモガニ(Cymo melanodactylus)は、ミドリイシのなかまのサンゴをすみかにするカニです。キモガニ属に分類され、サンゴガニ属とは別のなかまです。[1]

枝の間に身を隠しながら食べているのは、すみかであるサンゴそのもの。ただし、硬い骨格ではなく、その表面をおおう「組織(そしき)」という生きた部分です。[1]

ミドリイシのなかまのエダサンゴに身を隠すキモガニのなかま。Akira, 2015 / Yonehara beach
米原ビーチの浅瀬にて

すみかのサンゴを食べると聞くと、大きな被害が出ないのか気になります。串本海中公園の解説では、キモガニが食べる量は一般に少なく、すみかにしているサンゴに大きな被害を与えることはないとされています。[1]

病気のサンゴに集まるキモガニ

ホワイトシンドローム(WS)という病気にかかったサンゴには、キモガニが多く集まることが知られていました。そのため、キモガニがサンゴを食べることで WS が進むのではないかと疑われていたのです。[2]

そこで、オーストラリアのリザード島で水槽実験が行われました。

健康なサンゴと WS にかかったサンゴを別々の容器に入れ、キモガニが行き来できるようにつなぎます。移動先を調べると、87%がWSのサンゴへ移り、健康なサンゴへ移動したカニは3%でした。[2]

健康なサンゴとWSのサンゴの間で、キモガニが移動先を選ぶ実験の模式図。87%がWSのサンゴへ、3%が健康なサンゴへ移り、10%は移動しませんでした。
クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)をめぐるカニの移動先選択を示す模式図です。実験の容器や配置そのものを再現した図ではありません。

別の実験では、WSにかかったサンゴを、キモガニがいる水槽といない水槽に分け、病気によってサンゴの組織が失われる速さを比べました。[2]

ホワイトシンドロームの進行速度を比べた水槽実験の図。キモガニなしでは平均2.28 cm/日、ありでは0.74 cm/日。
クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)で病変が進む速さを比較。水槽やサンゴの配置は模式的に描いています。

キモガニがいる水槽では、いない水槽と比べ、病気が進む速さは約3分の1でした。[2]

この結果から、キモガニが病気のサンゴに集まり、その組織を食べることが、病変の進行を遅らせている可能性が示されました。[2] 当初の予想とは反対の結果だったのです。

私は、食べられる側は命を落とすものだと思っていました。けれど、サンゴとカニの関係を学ぶにつれて、私が見ていたのは、その関係のほんの一面だったのかもしれないと気づきました。

1センチにも満たない小さな生きものが、いつも、沢山のことを教えてくれます。

出典(調べるのに使った本や資料 ─ 3件)
  1. 平林勲(2019)「キモガニ」「キモガニの話」『マリンパビリオン』48(1):1–3、串本海中公園センター。全文PDF(閲覧日:2026-10-15)。
  2. Pollock, F. J., Katz, S. M., Bourne, D. G. & Willis, B. L.(2013)“Cymo melanodactylus crabs slow progression of white syndrome lesions on corals.” Coral Reefs 32:43–48。出版社・要旨、大学公式の研究紹介、DOI:10.1007/s00338-012-0978-9(閲覧日:2026-10-15)。
  3. Shmuel, Y., Ziv, Y. & Rinkevich, B.(2022)“Coral-inhabiting Trapezia crabs forage on demersal plankton.” Frontiers in Marine Science 9:964725。全文PDF、公開本文(閲覧日:2026-10-16)。

文・内藤明
更新 2026.10.18
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