
サンゴは私たちと同じ動物。高い水温の日が続いたり、夏の日差しも加わったりすると、ストレスが増えて体調を崩してしまいます。そこで、サンゴに届く光を少し弱められないかと考えた研究者たちがいます。
サンゴが白く見えるのはなぜ?
サンゴの体の中には、褐虫藻(かっちゅうそう)という小さな藻がすみついています。褐虫藻は光合成をして栄養をつくり、その一部をサンゴに渡します。サンゴは、褐虫藻と一緒に暮らしているのです。
ところが、高い水温や強い光などのストレスを受けると、体の中の褐虫藻や、その色素が減ることがあります。すると、サンゴは白く見えるようになります。これが白化です。白化が長く続くと、サンゴが死んでしまうこともあります。[1][2] 詳しいしくみは白化で紹介しています。
海面に浮かべる「日よけ」
この光による負担をやわらげようと研究されているのが、水面に広げる薄い膜、サンシールド(sun shield)です。
サンシールドは、ラップのようなプラスチックのシートではありません。細かな炭酸カルシウムの粒を水面に広げ、光をさまざまな方向へ散らすことで、海底に届く光を減らします。炭酸カルシウムはサンゴの骨格にも含まれる成分です。最初の発表では全て生分解性、2024年の論文では、粒を水面に広げるのを助ける成分は生分解性とされています。[1][2]

水槽で調べ、海の上でも試す
この膜で、光や白化の程度はどう変わるのでしょう。2018年、グレートバリアリーフ財団は、オーストラリア海洋科学研究所(AIMS)の水槽で、白化が起こる条件を再現し、7種のサンゴを調べた結果を発表しました。水面にこの膜を広げると、光が最大30%減り、試した種の多くで白化の程度も低くなったと報告されました。[1]
その後、研究チームはサンシールドを改良し、海の上でも試験しました。海面に浮かべた5メートル四方の枠の中に膜を広げると、水中に届く光が約20%減りました。この結果は、2024年の論文で報告されています。[2] (「最大30%」と「約20%」は、試験の場所や条件が違うため、そのまま比べることはできません。)
光を減らすと、どう変わる?
海の上で、光を減らせることが分かったサンシールド。では、光を20%減らすと、サンゴの負担はどう変わるのでしょう。
研究チームは、リザード島周辺の環境をコンピューターで再現し、2016〜2017年の白化シーズンに光を20%減らした場合を計算しました。その結果、光を減らすと、ストレスを受けるサンゴ礁の面積が少なくなると、予測されました。[2]

論文の著者らは、熱波と強い日差しが重なるような、厳しい天気予報がでたら、白化の危険が高い場所へ膜をすばやく広げられる可能性を挙げています。[2]
海で使うには、まだ調べることがある
海の上では風や波、潮の満ち引きで膜が動きます。試験では、風で膜が囲いの風下側に寄りました。粒が一方に集まると、重なって沈んだり、流されてしまうおそれもあるそうです。[2]
また、光を弱めれば弱めるほどよい、というわけでもありません。褐虫藻が光合成をするための光まで減ると、サンゴに渡る栄養も少なくなる可能性があります。膜の材料がサンゴやほかの生きものに影響しないか、海の中でどう分解されるかも、これから確かめる課題です。[2]
クリアしなければならない課題はまだあるようですが、サンゴ礁を守る新しい技術として期待が高まります。
出典(調べるのに使った本や資料 ─ 2件)
- Great Barrier Reef Foundation(2018年3月27日)「Reef ‘sun shield’ trials show promise to prevent coral bleaching」Media Release。
- Scofield, J. M. P. et al.(2024)“The Development of a Floating Mono-Particle ‘Sun Shield’ to Protect Corals from High Irradiance during Bleaching Conditions.” Journal of Marine Science and Engineering, 12(10), 1809.
コメントはこちら(1件)
植物の栽培でも、強い光が直接当たらないよう、畑に遮光ネットをかけたり、シェードツリーという大きな木を植えて、作物に影を作ることがあります。 でも海では、大きなネットをかけると波や台風で壊されてしまうこともあるし、設置する作業も、陸上と比べて大変。 そこで開発されたのが今回のサンシールドなんですね。海洋ごみにならず、 自然に分解される物質で作ろうとすると、とてもハードルが高いように思いますが、 今後もこうした技術が増えていったら嬉しいですね。